--- [article] uuid = "f4985d54-0907-4449-8101-0fcd382f9e02" title = "PHPerKaigi 2022 トークン問題の解説" description = "PHPerKaigi 2022 で私が作成した PHPer チャレンジ問題を解説する。" tags = [ "conference", "php", "phperkaigi", ] [[article.revisions]] date = "2022-04-09" remark = "公開" [[article.revisions]] date = "2022-04-16" remark = "2問目、3問目の解説を追加、1問目に加筆" ---
はじめに

本日開始された PHPerKaigi 2022 の PHPer チャレンジにおいて、弊社 デジタルサーカス株式会社 の問題を 3問作成した。この記事では、これらの問題の解説をおこなう。

リポジトリはこちら: https://github.com/nsfisis/PHPerKaigi2022-tokens

第1問 brainf_ck.php

ソースコードはこちら。実行には PHP 8.1 以上が必要なので注意。

(fn($x) => $f(fn(...$xs) => $x($x)(...$xs)))(fn($x) => $f(fn(...$xs) => $x($x)(...$xs))); $id = \spl_object_id(...); $put = fn($c) => \printf('%c', $c); $mm = fn($p, $n) => new \ArrayObject(\array_fill(+!![], $n, $p)); $👉 = fn($m, $p, $b, $e, $mp, $pc) => [++$mp, ++$pc]; $👈 = fn($m, $p, $b, $e, $mp, $pc) => [--$mp, ++$pc]; $👍 = fn($m, $p, $b, $e, $mp, $pc) => [$mp, ++$pc, ++$m[$mp]]; $👎 = fn($m, $p, $b, $e, $mp, $pc) => [$mp, ++$pc, --$m[$mp]]; $📝 = fn($m, $p, $b, $e, $mp, $pc) => [$mp, ++$pc, $put($m[$mp])]; $🤡 = fn($m, $p, $b, $e, $mp, $pc) => match ($m[$mp]) { +!![] => [$mp, $z(fn($loop) => fn($pc, $n) => match ($id($p[$pc])) { $b => $loop(++$pc, ++$n), $e => $n === +!![] ? ++$pc : $loop(++$pc, --$n), default => $loop(++$pc, $n), })($pc, -![])], default => [$mp, ++$pc], }; $🎪 = fn($m, $p, $b, $e, $mp, $pc) => match ($m[$mp]) { +!![] => [$mp, ++$pc], default => [$mp, $z(fn($loop) => fn($pc, $n) => match ($id($p[$pc])) { $e => $loop(--$pc, ++$n), $b => $n === +!![] ? $pc+![] : $loop(--$pc, --$n), default => $loop(--$pc, $n), })($pc, -![])], }; $🐘 = fn($p) => $z(fn($loop) => fn($m, $p, $b, $e, $mp, $pc) => isset($p[$pc]) && $loop($m, $p, $b, $e, ...($p[$pc]($m, $p, $b, $e, $mp, $pc))) )($mm(+!![], +(![].![])), $p, $id($🤡), $id($🎪), +!![], +!![]); $🐘([ $👍, $👍, $👍, $👍, $👍, $👍, $👍, $👍, $👍, $👍, $🤡, $👉, $👍, $👍, $👍, $👉, $👍, $👍, $👍, $👍, $👍, $👉, $👍, $👍, $👍, $👍, $👍, $👍, $👍, $👍, $👍, $👍, $👍, $👍, $👉, $👍, $👍, $👍, $👍, $👍, $👍, $👍, $👍, $👍, $👍, $👈, $👈, $👈, $👈, $👎, $🎪, $👉, $👍, $👍, $👍, $👍, $👍, $📝, $👎, $👎, $📝, $👉, $👎, $👎, $👎, $📝, $👉, $👎, $👎, $👎, $📝, $👎, $👎, $📝, $👎, $📝, $👈, $📝, $👉, $👉, $👎, $👎, $📝, $👍, $👍, $👍, $👍, $👍, $👍, $👍, $📝, $👈, $👎, $👎, $👎, $👎, $📝, $👈, $📝, $👉, $👍, $👍, $📝, $👉, $👎, $📝, $👈, $📝, ]); ]]>

この問題は、単に適切なバージョンの PHP で動かせばトークンが得られる。

解説
絵文字

まず目につくのは大量の絵文字だろう。 PHP は識別子に使用できる文字の範囲が広く、絵文字も使うことができる。

プログラム全体

Brainf*ck のインタプリタとプログラムになっている。 Brainf*ck とは、難解プログラミング言語のひとつであり、ここで説明するよりも Wikipedia の該当ページを読んだ方がよい。

https://ja.wikipedia.org/wiki/Brainfuck

なお、brainf*ck プログラムを普通の書き方で書くと、次のようになる。

+ + + > + + + + + > + + + + + + + + + + + + > + + + + + + + + + + < < < < - ] > + + + + + . - - . > - - - . > - - - . - - . - . < . > > - - . + + + + + + + . < - - - - . < . > + + . > - . < . ]]>

実行結果はこちら: https://ideone.com/22VWmb

それぞれの絵文字で表された関数が、各命令に対応している。

  • $👉: >
  • $👈: <
  • $👍: +
  • $👎: -
  • $📝: .
  • $🤡: [
  • $🎪: ]

, (入力) に対応する関数はない (このプログラムでは使わないので用意していない)。

なお、$🐘 はいわゆる main 関数であり、プログラムの実行部分である。

絵文字の選択

おおよそ意味に合致するよう選んでいるが、$🤡$🎪 は弊社デジタルサーカスにちなんでいる。 また、$🐘 は PHP のマスコットの象に由来する。

strict_types

declare 文の strict_types に指定できるのは、01 の数値リテラルだが、 0x00b1 のような値も受け付ける。 今回は、PHP 8.1 から追加された、0O または 0o から始まる八進数リテラルを使った。

URL

ソースコードのライセンスを示したこの部分だが、

完全に合法な PHP のコードである。 https: 部分はラベル、// 以降は行コメントになっている。

リテラルなしで数値を生成する

ソースコード中に、ほとんど数値リテラルが書かれていないことにお気づきだろうか。 PHP では、型変換を利用することで任意の整数を作り出すことができる。

[]! を適用すると true が返ってくる。それに + を適用すると、bool から int ヘの型変換が走り、1 が生成される。10 はさらにトリッキーだ。まず 10 を作り、. で文字列として結合する ('10')。これに + を適用すると、string から int への型変換が走り、10 が生まれる (コード量に頓着しないなら、1 を 10 個足し合わせてももちろん 10 が作れる)。

また、error_reporting に指定しているのは -1 である。 これは、! によって文字列を false にし、+ によって false0 にし、さらにビット反転して -1 にしている。

if 文なしで条件分岐

三項演算子ないし match 式を使うことで、if を一切書かずに条件分岐ができる。 また、&& / || も使えることがある。 遅延評価が不要なケースでは、[$t, $f][$cond] のような形で分岐することもできる。

whilefor 文なしでループ

不動点コンビネータを使って無名再帰する (詳しい説明は省略する。これらの単語で検索してほしい)。 ここでは、一般に Z コンビネータとして知られるものを使った ($z)。

実際のところ、$🤡$🎪$🐘 は、一度 Scheme (Lisp の一種) で書いてから PHP に翻訳する形で記述した。

なお、PHP は末尾再帰の最適化をおこなわない (少なくとも今のところは) ので、 あまりに長い brainf*ck プログラムを書くとスタックオーバーフローする。

第2問 riddle.php

ソースコードはこちら。実行には PHP 8.0 以上が必要なので注意。

さて、この問題はさきほどのように単純に実行しただけでは、謎のブロックが表示されるだけでトークンは得られない。 トークンを得るためには、ソースコードを読み、定数 N を特定する必要がある。

ここでは、私の想定解を解説する。

読解

まずはソースコードを読んでいく。

数値からなる $token があり、各要素をループしている。

まずは排他的論理和 (xor) を取り、

二進数に変換して、

0 を空白に、1 を # にし、

5文字ごとに区切ったあと、改行で結合している。

ヒント

次に、ソースコードに書いてあるヒントを読んでいく。

  • N それ自体は、42 や 8128 といったような特別な意味を持たず、ランダムに決められている
  • $token の各要素は、1文字を表す
  • 1文字は 5x5 のセルからなる
  • 出力されるのは、完全な PHPer トークンである

ここで、PHPer トークンは必ず # 記号から始まることを思いだすと、 $token の最初の数字 0x14B499C は、変換の結果 # になるのではないかと予想される (なお、このことは、リポジトリの README ファイルに追加ヒントとして書かれている)。

解く

ここまでわかれば、あと一歩で解ける。すなわち、0x14B499C# に変換されるような N を見つければよい。

N は高々

なのでブルートフォースしてもよいが、ここではブルートフォースしない方法を紹介する。

この一連の変換に対する逆変換を考えると、次のようになる。

これを実行すると、N が得られる。

第3問 toquine.php

ソースコードはこちら。

vzcybqr(', ', $j), neenl_puhax(neenl_znc(sa($k) => fcevags('0k' . pue(37) . '07K', $k), $kf), 10)); cevags($f, $g, fge_ebg13("<<<'Q'\a{$f}\aQ"), vzcybqr(",\a", $jf)); Q; $s = str_rot13($s); $xs = [ 0x0AFABEA, 0x1F294A7, 0x1F2109F, 0x1F294A7, 0x0002800, 0x1F2109F, 0x0117041, 0x1F294A7, 0x1FAD6B5, 0x1F295B7, 0x010FC21, 0x1FAD6B5, 0x1151151, 0x010FC21, 0x1F294A7, 0x1F295B7, 0x1FAD6B5, 0x1F294A7, 0x1F295B7, 0x1F8C63F, 0x1F8C631, 0x1FAD6B5, 0x17AD6BD, 0x17AD6BD, 0x1F8C63F, 0x1F295B7, ]; $t = null.false; for ($i = 0; $i <= intdiv(__LINE__-035,6); ++$i) if (!isset($xs[$i])) break; else $t .= implode("\n", str_split(str_replace(['0','1'], [' ','##'], sprintf(chr(37) . '025b', $xs[$i])), 012)) . "\n\n"; $ws = array_map(fn($w) => implode(', ', $w), array_chunk(array_map(fn($x) => sprintf('0x' . chr(37) . '07X', $x), $xs), 10)); printf($s, $t, str_rot13("<<<'D'\n{$s}\nD"), implode(",\n", $ws)); ]]>

コメントにもあるとおり、次のようにして実行すれば答えがでてくる。

実際にはもう少しパイプで繋げなければならない。

解説
プログラム全体

コメントにもあるとおり、これは quine (風) のプログラムになっている。 Quine とは、自分のソースコードをそっくりそのまま出力するようなプログラムのことである。

このプログラムは、実行すると自身とほとんど同じプログラムを出力する。 異なるのはトークンになっている部分のみである。

トークン

$xs がトークンに対応している。変換のロジックは riddle.php とほぼ同じなので省略する。

状態保持

トークンの何文字目まで出力したかを、ソースコードを変えずに (quine なので) 覚えておく必要がある。 このプログラムでは、トークンが出力されるとソースコードがだんだんと長くなっていくのを利用して、__LINE__ から情報を取得している。

ROT 13

Quine は、素朴に書くとプログラムの一部が 2回記述されてしまう。 これがあまり美しくないので、toquine.php では、ROT 13 変換を使って難読化した。

それにしてもなぜこんなものが標準ライブラリに……。

おわりに

解いていただいたみなさん、また、難易度調整につきあっていただいた社内のみなさん、ありがとうございました。

今回は直前に作りはじめたのもあり、3問だけかつ使い古されたネタばかりになってしまいましたが、 来年は 5問、より面白い問題を持っていきます。

実はもう作りはじめているので、どうか来年もありますように……。